
小規模多機能ホームは2006年4月、介護保険法改正により制度化されました。
急速に高齢化が進む中、介護保険制度において、現在の施設中心の介護体制では対応できなくなることは明白でした。厚生労働省は、今後の介護の在り方として、「施設」から「在宅」への転換する方針を打ち出しました。そこで、新しく創設された小規模多機能ホームは、地域で介護を支えるコミュニティとして、大きな役割を担うことになりました。
小規模多機能ホームの前身
小規模多機能ホームは、法制度化される以前から「宅老所」という名称で存在していました。
「宅老所」は、大規模老人施設とは違い、介護や支援を必要としている高齢者に既存の民家等でサービスを提供することにより、気の知れた仲間同士の家庭的な雰囲気で過ごすというものでした。ゴールドプランの中で、大規模老人施設の整備が進む中、一方では「宅老所」によるケアの実践を行う事業所も増えていったのです。
介護や支援が必要な高齢者にとって、気を遣わず、信頼関係が構築しやすい、小規模の「宅老所」は理想的な形態でした。特に、要介護者の半数を占めるといわれる認知症高齢者にとっては、住み慣れた地域で、できるかぎり環境を変えずにケアを受けることができるということが大切なのです。
「宅老所」が実践してきた、住み慣れた地域と小規模ならではの家庭的な雰囲気にこだわったケアは、高齢化が急速に進む日本において認められ、法制度化する運びとなったのです。
昔は、家族や隣近所で支えあってきた高齢者のケアも、現在では、核家族化が進み、近所付き合いも無くなっています。そんな、昔の良き時代を再現すべく、地域ケア・コミュニティーの拠点として小規模多機能ホームは注目されています。
小規模多機能ホームの現在
小規模多機能ホームは、2007年、全国で1000ヶ所を超えました。。「2015年の高齢者介護」では、小規模多機能ホームを利用者の生活圏内、つまり、小・中学校区ごとに整備することが必要だとされています。24時間365日体制で、いつでも必要な介護サービス(通所介護・宿泊介護・訪問介護)を受けることが出来る小規模多機能ホームは、在宅生活を送る要介護者の強い味方になっています。切れ目の無い介護サービスを提供できる小規模多機能ホームは、便利で安心感のある、言わば介護のコンビニエンスストアなのです。
小規模多機能ホームの未来
小規模多機能ホームを利用することによって、介護が必要になっても、介護が重度化しても、認知症になっても、住み慣れた地域・自分の家で生活を送ることが可能になります。「こんな所があったらいいなぁ」を実現した小規模多機能ホームは、近い将来、最も親しみのある介護サービスになることは間違いありません。また、居住できる仕組みをプラスした、グループホームや有料老人ホームの併設型も増えてくるものと思われます。
|